![]() いいカンジにただれたジャケ 『歌笑曲 嘆きのボイン』 B面:『歌笑曲 女は魔もの』 作詞・作曲・歌:月亭可朝 テイチクレコード SN-908 1969年12月 |
「参院選出馬・落選」を最大の持ちギャグとする芸人・月亭可朝の音盤における代表作。 「ボインはぁ〜赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ〜」というフレーズは、ある年齢以上の関西人にはDNAレベルで刷り込まれていると言っても過言ではない。 内容は、マイナー進行のギターメロディに乗せられた「ボイン談義」。「ボインと云うのは、どこの国の言葉」「おおっきいのんがボインなら、ちっちゃいのんはコインやで、もっとちっちゃいのんは、ナインやで」など、ギャグと呼ぶにはあまりにとりとめのない語りが続く。可朝のこうした一連の作品は「歌笑曲」と命名されているが、その曲調はむしろしみじみと物悲しく、ある意味ブルージーですらある。噂では可朝はコードをふたつしか知らなかったというが、そんなことはたいした問題ではない。岡林信康よりひとつ少ないだけである。 歌詞の中で白眉なのは中盤。 「なんで女の子だけボインになるのんけ 腹の立つ事、いやな事、シャクな出来事あった日は 男やったら酒のんであばれまわってうさ晴らし 女の子ならなんとする 胸にしまって我慢する女の子の胸の中 日頃の不満がたまってる それがだんだん充満して来て胸がふくれてくるんやで」 こういう哀愁のある歌詞が、可朝自身の「ゴンタ(やんちゃ)やけど憎めへん」キャラクターと相まって、この曲を単なるエロ歌とは一線を画する名曲としているのである。ディック・ミネがこの曲を絶賛してやまなかったというエピソードもむべなるかなと言えよう。 B面は『女は魔もの』。「ネオンの下でナンパした娘は、あとでよく見たら自分のお母んより年上のおばはんだった」というスジの語りであるが、当然のごとくメロディ進行は『嘆きのボイン』といっしょである。(ふじー) |