『嘆きのボイン』 月亭可朝

20010926


ジャケ
いいカンジにただれたジャケ


『歌笑曲 嘆きのボイン』
B面:『歌笑曲 女は魔もの』
作詞・作曲・歌:月亭可朝
テイチクレコード
SN-908
1969年12月
「参院選出馬・落選」を最大の持ちギャグとする芸人・月亭可朝の音盤における代表作。
「ボインはぁ〜赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ〜」というフレーズは、ある年齢以上の関西人にはDNAレベルで刷り込まれていると言っても過言ではない。
 内容は、マイナー進行のギターメロディに乗せられた「ボイン談義」「ボインと云うのは、どこの国の言葉」「おおっきいのんがボインなら、ちっちゃいのんはコインやで、もっとちっちゃいのんは、ナインやで」など、ギャグと呼ぶにはあまりにとりとめのない語りが続く。可朝のこうした一連の作品は「歌笑曲」と命名されているが、その曲調はむしろしみじみと物悲しく、ある意味ブルージーですらある。噂では可朝はコードをふたつしか知らなかったというが、そんなことはたいした問題ではない。岡林信康よりひとつ少ないだけである。

 歌詞の中で白眉なのは中盤。

「なんで女の子だけボインになるのんけ
 腹の立つ事、いやな事、シャクな出来事あった日は
 男やったら酒のんであばれまわってうさ晴らし
 女の子ならなんとする
 胸にしまって我慢する女の子の胸の中
 日頃の不満がたまってる
 それがだんだん充満して来て胸がふくれてくるんやで」

 こういう哀愁のある歌詞が、可朝自身の「ゴンタ(やんちゃ)やけど憎めへん」キャラクターと相まって、この曲を単なるエロ歌とは一線を画する名曲としているのである。ディック・ミネがこの曲を絶賛してやまなかったというエピソードもむべなるかなと言えよう。

 B面は『女は魔もの』。「ネオンの下でナンパした娘は、あとでよく見たら自分のお母んより年上のおばはんだった」というスジの語りであるが、当然のごとくメロディ進行は『嘆きのボイン』といっしょである。(ふじー)


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