新潟県 「ほだれ祭」
報告者:藤井 浩
採集日:20040314

新潟県のほぼ中央、JR長岡駅からバスで約50分の距離にある栃尾市。そこからタクシーでさらに15分ほど山がちの道を行くと、下来伝と呼ばれる地区に着く。毎年3月第2日曜、春とはいえまだ雪の残るこの地で催される奇祭が「ほだれ祭」だ。

ご神体「ほだれ様」を安置した社殿

ご神木の傍らにはいくつものちんこが
午前11時、樹齢800年と言われる杉の大木にしめ縄が張られるところから祭りは始まる。このご神木のかたわらの祠に祀られているのが、全長2.2メートル・重量600キログラムという巨大なご神体「ほだれ様」である。「ほだれ」とは「穂垂れ」、すなわち稲が豊かに実るさまを意味するらしい。宮司による五穀豊穣、家内安全その他もろもろの願いを込めた祝詞が奉納され、見物人たちも神妙にその様子を見守る。

おごそかにとりおこなわれる儀式
次に、その年に結婚した女性、つまり「初嫁」たちが祠の前に呼び出される。実はこの初嫁こそが、ほだれ祭の主役である。彼女たちはこの祭りによって子宝と安産を約束され、同時に集まった他の人々に福を授けるのだ。本来この初嫁は当地に嫁いできた女性の役割だったのだが、現在では広く全国から参加者を募集しているようだ。

祭の主役、初嫁登場
初嫁のお披露目とお祓いが終わると、蓑笠のいでたちをしたふたりの男が樽酒を運んでくる。ここで初嫁による鏡割りがとり行われ、この酒はお神酒として参加者に振舞われる。

お神酒の入場
このあとしばらく一般客の参拝が受け付けられ、ご神体に向けて長い列ができる。そしてこの列がひと段落したとき、いよいよ祭はクライマックスを迎える。
道路にひしめく見物客を分け入るようにして、大きな神輿が運ばれる。だがこの神輿、土台だけで上に何も乗っていない。

木組みだけの神輿
実は、あの巨大なご神体「ほだれ様」を、そのまま祠から出してこの上に乗せるのだという。数人の男衆によって、ご神体が祠からかつぎ出される。なにしろ重さ600キロ、かなりの難作業である(単にダンドリが悪いようにも見えたが)。四苦八苦の末にご神体は神輿の土台に据えられ、巨大なちんぽ神輿が完成する。

神輿の上にご神体が合体!
……と思ったら、これで完成ではない。この上に、さらに乗るのだ。何がって、例の初嫁が。担ぎ手に促され、ご神体に馬乗りになる初嫁たち。定員は3〜4名らしい。花嫁ライドオンちんぽである。

こわごわとちんぽの上に乗る嫁たち
そして嫁たちを乗せた神輿は、勇壮な担ぎ手たちによって激しく揺さぶられながら右へ左へと祭の会場を駆け回ってゆく。会場といってもそこは祠の前の2車線くらいの道路でしかないので、狭い場所にひしめく観客は神輿が迫ってくると必死で逃げ回ることになる。ほとんどスペインの牛追い祭である。だがこのせわしなさが、祭の狂騒をいやがうえにも盛り上げる。

嫁を乗せてちんぽ神輿大爆走!
はじめは恥ずかしがっていた嫁たちも、一度ちんぽに乗ってしまうともう文字通りノリノリである。このまま宇宙に行ってしまうのではないかというハイテンションのなか、嫁たちの驀進は続く。
担ぎ手たちは「ソヤッ、ソヤッ!」という掛け声をあげて神輿を担ぐ。この掛け声がそのうちに「初夜! 初夜!」と聞こえてくるところがミソである。実際、みんなわざと「ショヤ!」と叫んだりしていた。
初嫁を全員乗せたあとは、一般客の中から希望する女性を乗せるサービスも。こういう祭りには必ず来ている外国人観光客(ちんまん祭りを専門に紹介するツアー会社でもあるのか?)の女性も積極的に参加して場をさらに盛り上げる。結局、通算1ダースほどの女性を乗せてちんぽ神輿は場内を往復した。

女性たちを乗せてちんぽ神輿はゆく
ちんぽライドで大いに盛り上がったあとは、ふたたびご神体を神輿から祠に戻す作業が行われる。もちろんこれも一筋縄ではいかない大仕事である。途中、運ぶ男衆の姿勢がふらついて「ああっ、だいじょうぶかちんぽ!」とハラハラしたが、無事ご神体は祠に戻され、来年の嫁に乗られるまで安息の日々を過ごすのであった。
最後に、初嫁による壇上からの富くじ撤与の儀がとり行われ、祭はおひらきとなる。ここでは菓子とともに五円玉を包んだおひねりが客に向かって撒かれ、みなその福を授からんがために必死でキャッチする。このおひねりの紙には番号が書かれており、後ほどそれによる景品抽選会も行われるのであった。このあたり、なんか庶民的でほほえましい。

ラストは盛大に
この祭りの原型は江戸時代あたりからあったそうだが、今のこの形で催されるのは今年(2004年)で25年目だという。そういう意味ではあまり歴史のある祭ではないのかもしれないが、こうして外国人も含めた多くの観光客を集めて盛り上がっているということは、町おこしとして非常に奏功していると言えるだろう。ちんまんが地域を活性化させる、すばらしいことではないか。
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