![]() 表紙はスケ番・池玲子様(東映にちゃんと仁義切ってるかは謎) 『肉体別 性の自由』 著者:辻村圭一 医学監修:西村俊身(医学博士) 駿河台書房 出版年不明(1970年ごろ) ![]() ![]() かなり独特な誌面構成 ![]() こんなラーゲはいりません。 ![]() 「キミが追求すべき理想的女性像」だそうです。 |
戦後、謝国権『性生活の知恵』に代表されるような「科学・医学にかこつけたエロ本」が隆盛を極めた時代があった。風俗紊乱ゆるすまじという風潮を、当時のエロ出版社は「正しい夫婦生活のための知識を啓蒙する」という美名のもとに乗り切ったのである。 そういった時代の残滓とも言えるのが、60年代末から70年代にかけて発刊された駿河台書房の『性の自由』シリーズである。 これは日本のセックスのありようを「地方別」「職業別」「肉体別」などといった分類のもとに解説するというもの。一見すればなんとなく民俗学的価値がありそうなものだが、実際のところそんなものはもちろん微塵もない。むしろ思いっきり強引なセックス分類論(「埼玉県民は空港反対の活動家が多く、バリケードの中で愛し合う」とか)が笑いどころとなっている。 なかでも今回取り上げる「肉体別」は、そのいいかげんさが突出した名編。表紙には「医学監修・医学博士 西村俊身」とあるが、この西村某博士が実在するかどうかわかったもんじゃない(※注)。コンセプトとしては女性の肉体パーツの特徴を取り上げて、そのセックス嗜好の傾向と対策を論じるというものだが、それがまた著しく根拠に乏しい。いわく、 「やせぎすの女性はどうしても神経質でツメタイと見られがちだが、その実はムード派であり抽象的な夢を描くロマンチスト」 とか 「後頭部が出ている女性は、セックスに落ちてゆく一歩手前でするりと身をかわすニクサを持っている。性器も膣口と肛門を取り巻く8字型のエーナス挙筋の作用が強く発達した立派な構造を持っている」 とか 「眉間の広い女性は、狭い部屋の中でごそごそやるセックスは好まない。青カン。これが彼女たちとのセックスにピッタリ」 とかいった調子である。 また、さらに本書を滋味深いものにしているのは、本文の内容とほとんど関係なく穴埋めのように挿入されている数々の図版である。おそらく他のエロ本やウラで流通している生写真とかから勝手に引っ張ってきたものを、テキトーに使っているのだろう。だいたい表紙の池玲子からして、ちゃんと許諾を得て使っているのかどうか怪しい。 さらに写真だけでは足りないところは、意味不明のキャッチ(「彼女たちはかなり好きなのだ。」とか「ホクロ・セックス? ウン! これだ!」とか)や不気味なイラストで埋められる。これが本書を鬼気迫るものにしている要因である。 21世紀の今、本書を手に取るといろんな意味でむずがゆい気持ちになる。だがなによりむずがゆいのは、30年ほど前にはこの本で真剣に興奮していた人がいたかもしれないという事実だろう。(ふじー) (※注) 掲示板にて、「群馬のてぃむぽ」様より以下のようなご指摘がありました。訂正の意味を込めてその全文を掲載させていただきます。お教えいただきありがとうございました。 『肉体別 性の自由』の監修の医学博士、西村俊身氏は実在します。 上野形成美容外科の院長です。以前、群馬テレビのエロ番組「ミッドナイトかわら版」で司会していたので群馬県や埼玉県北部のエロはみんな知ってますよ。 中学生の頃、修学旅行で上野で乗り換えがあったのですが、下品な男子は「上野だって、西村先生がいるところだぜ。包茎直してもらおうぜ」などと言っていたものです。 この西村先生の経歴は不明ですが、「東大を受けて落ちて浪人していた」と本人が言っていました。その後東大に受かったのか他の大学に行ったのかは分かりませんが…。 |