韓国成年マンガを読む
報告者:藤井 浩
採集日:20030603
私事ではあるが、このあいだ(2003年5月8日〜17日)韓国へ旅行してきた。その際、現地の書店でいわゆる成年(青年)向けマンガをいくつか購入してきたので、ここに紹介する。
韓国は儒教社会ということでなんとなくエロには厳しい印象が日本人にはあるが、アニメ化されて有名になったアダルトギャグマンガ『NuDLNuDE(ヌドゥル・ヌード)』の成功から、成年マンガの地位は意外なほど高くなっているようだ。書店を見ても、少年少女向けのマンガは日本作品の翻訳が圧倒的に多く、韓国作家のオリジナリティは成年コミックでこそ発揮されているように見える。
以下にピックアップしたものはそれらのごく一部であるが、とりあえずこれで韓国Hマンガの片鱗を感じていただければ幸いである。なお筆者はハングルの音素からかろうじて発音を類推できる程度の語学力しかないので、タイトルや著者名の表記、さらにはレビューの内容も的外れになっている可能性は否めない。韓国語に詳しい、または韓国マンガ事情に明るい同志各位の補完を望むものである。
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『我色氣歌(アセッキガ)』
作:ヤン・ヨンスン
著者名を特に気に留めずに買ってしまったが、よく見たら『ヌドゥル・ヌード』と同じヒトの作品だった。新聞漫画として連載されていた見開き完結のショートコミックをまとめたもので、日本で言えば岩谷テンホーあたりの位置づけになるのだろう。ただし絵柄や全体的なセンスはこちらのほうが洗練されているように思える。とりあえずテンホーの描く女では抜けないが、こっちの女性キャラでならなんとかなりそうだし。
ネタは基本的にはお下劣ギャグなのだが、間のとり方やセリフで落とすものも多く、いわゆる「不条理マンガ」のエッセンスもちらほら感じられる。このあたりは、やはり韓国語が理解できるともっと楽しめるのだろう。
『バイロス』
作:パク・キョングン
タイトルはVirus=ウィルスのことらしいが、内容はあまり関係なくて、主に中世を舞台とした素朴な艶笑小噺といったところ。これも新聞漫画。ノリとしては黒鉄ヒロシや小島功に近いだろうか。強くて勇ましい妻とドジで頼りない夫のコンビを主人公として、ほのぼのとしつつもベタな下品ギャグを連発する。特に「鉄砲隊の放った弾丸をまんこで受けて撃ち返す」とか「母乳で鳥を落とす」とかいったミもフタもないネタが多い。
比較的セリフが少ないので、韓国語がわからなくてもそれなりに笑えるのがうれしい。
『プルプル』
作:イ・ジョングァン
つい表紙買いしてしまった4コママンガ。男の子ふたり、女の子ふたりの4人の高校生(たぶん)を主人公にした、学園プチエロドタバタコメディ。『ポーキーズ』とか『パンツの穴』みたいなもんですね。
絵柄は初期のこしばてつやにちょこっと『浦安鉄筋家族』を加えたというカンジだが、屈託がなくて実にかわいい。コマによっては「萌え」すら感じさせる。明るくカラッとしたタッチはきわどいエロネタも下品に見せず、このまま訳して日本で出版しても充分にイケるのではという気がする。
余談だが、筆者がついでに買ってきた青年マンガ雑誌『YOUNG JUMP(日本のヤングジャンプとは無関係。ただ正式なライセンシーのもと日本マンガを載せている)』には、同じ作者によるストーリーマンガが連載されていた。こちらは絵柄もより洗練されていて、いっそう日本でのブレイクが期待される。
『内侍悲歌(ネシビカ)』
原作:イ・コン 作画:パク・チェヨン
内侍とは宦官、すなわち去勢して宮中に仕える者たちのこと。この作品は自ら内侍となって後宮に入り込んだ男の野望と復讐の物語である(たぶん)。朝鮮史にうといので詳しい時代設定はわからないが、おそらく高麗王朝時代(10世紀ごろ)が舞台だと思う。
『バカボンド』の井上雄彦のようなスピード感のある描線のなかに、ときおり耽美的で繊細なタッチを織り交ぜる器用な作画が見もの。ストーリーも大河歴史ドラマの様相を呈している。もちろん房術や性風俗の描写も随所に見られ、このあたりも学会としては注目すべき作品である。
おまけ
慶州(キョンジュ)でみやげもの屋に引っかかって買わされたパネル。
でも本人はまんざらでもない買い物だったと思っているらしい。
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