奈良県 明日香村「おんだ祭」
報告者:藤井 浩
採集日:20020203
関連項目:豊穣の祈り(さ〜ら) | 怪しげ探検隊・おんだ祭編
国のまほろばと称される大和・奈良県のなかでも、とりわけ古代の息吹を残す地が明日香村である。橿原神宮や飛鳥寺、酒船石などといった名所旧跡が集中し、年間を通じて観光客も多い。
だが毎年2月の第一日曜には、ここを訪れる客の層がいささか変化する。それは、この日が飛鳥坐(あすかにいます)神社の例祭・おんだ祭の日だからである。

祭りでにぎわう飛鳥坐神社
近鉄吉野線を橿原神宮前駅で下車、そこからバスで数分。飛鳥坐神社の前の狭い道には屋台が立ち並び、現地のこどもたちでにぎわっている。まだ午前中とあって(祭の開始は午後2時)観光客はまばらだが、それでも大きなカメラを携えた日曜写真家(このテの祭にはかならずいる)がすでに何人かスタンバっている。
筆者も笹酒をすすりながら、しばし神社の中を散策。見るとそこここに、陰陽物をかたどったオブジェが並んでいる。

社務所前の「むすびの木」の根本にあるちんまん

いたるところにあるちんこ石
あまりにもたくさんのちんこ石があるので、目に入る石はすべてちんこに見えてしまうという罠。
ひととおり神社内を巡ってから社外に下りてみると、なにやら嬌声とともに「バシン、バシン」という乾いた音が聞こえてくる。見ると、翁や天狗の面をつけた男が手に竹の棒を持ち、そこらじゅうにいる人々を手当たり次第に叩いている。

竹の棒をたずさえ徘徊する翁

竹の先端はササラ状になっている(SMのバラムチ状態)

目についた見物人を無差別にスパンキング

撮影していた筆者を手招きする天狗(このあと思い切り叩かれた)
狂ったように人々を追いまわし、尻を叩きまわる2匹のスパンキング・モンスター。だが叩かれた人々は一様にうれしそうだ。実はこれには「悪魔よけ」の意味があるらしく、尻を叩かれた人は身体についた厄が落とされ、そしてこの騒ぎが大きければ大きいほどに豊作を呼ぶのだという。
筆者も何度か目をつけられてこの洗礼を受けたが、はっきり言ってめちゃくちゃ痛かった。
祭の本番にはまだ数時間の余裕があったが、祭事がはじまるころには例年非常に混み合うと聞いていたので、早いうちから能舞台前に待機。神社本殿と向き合うようにして建てられたこの舞台で、おんだ祭の儀式は執り行われるのだ。
案の定、開幕の時間が近づくにつれ舞台の前にはおびただしい数の見物人が集まってきた。現地の人々はもちろん、観光客やカメラオヤジが続々とやってきて、午後1時にもなると立錐の余地もないぎゅうぎゅう詰め状態に。
そして和太鼓チームの演奏のあと、いよいよ神事が開始される。

社殿に向かって五穀を奉納
おんだ祭とは「御田祭」、すなわち豊作を願うお田植え神事である。したがって、壇上では最初は非常に厳粛に、神主たちによる祝詞や玉ぐし奉納などの儀式が行われる。
社殿に向けて五穀が奉納されると、舞台には先ほど客を叩きまくっていた翁と天狗、そして牛(前足を棒で延長して歩くライオンキング方式)が登場。田を耕し種もみを植え付けるという農耕の所作を演じるのだが、このあたりからだんだん祭の雰囲気があやしくなってくる。三者ともおとなしく儀式をやっているのは最初の数刻だけで、そのうちいきなり壇上からすべって落ちたり、客の前に乱入したりして観客を笑わせるのだ。

牛、ちょっと苦しそう
こうしてなごやかなうちに祭事は一時休憩。数刻の間をおいて、いよいよ第二部がスタートする。期待に胸を膨らませるギャラリーの前に現れるのは、例の翁と天狗、そしてお多福。もちろんお多福の正体も男衆なのだが、くねくねとシナをつくってなかなか女らしい。
天狗とお多福は翁を仲介人として、舞台で結婚の儀式を行う。ふたりはごはんがてんこ盛りになった椀(「鼻つき飯」と呼ぶ)を神主の前にうやうやしく差し出す。

神主に飯を奉納する夫婦(面で前が見えないのでスリル満点)
だがそのとき、天狗が思わぬ行動に出る。懐からやおら大きな竹筒を取り出して、それを股間にあてがい振るではないか。あまつさえ、その竹ちんぽを神主の鼻先や観客の前に突きつけ、ぐりんぐりんと動かし始める。


いきなりちんぽを振りまくる天狗
これは「汁かけ」といい、めでたい席で酒を振舞う所作と陽根をアピールする所作がミックスしたパフォーマンスらしい。このあたりで、場内はやおら盛り上がる。
そして、いよいよ「その儀式」がはじまる。

衆目環視のなかでファック開始!

翁は最初はその行為を客から隠すが……

しまいには翁もおてつだい
さあみなさんお待ちかね。天狗とお多福が舞台の上でいきなり結合をはじめる。寓意も象徴性もない。まんまである。このあからさまな行為に、会場はいやが上にも盛り上がる。翁も最初は壇上に立ちはだかってふたりの秘め事を見せないようにするが、すぐに天狗の腰を押してお仕事のサポート。このあたり、見ようによっては翁を交えた3Pに見える(しかも翁は天狗に挿入)。
こうして狂騒のうちに天狗は果て、夫婦の契りは完結する。だが、観客がエキサイトするのは実はここからだ。

お多福の股間に大量のちり紙を……

そしてその紙を観客にシュート!

狂乱のフィナーレ
天狗と翁は、行為が終わったあとのお多福の股間をちり紙で拭いはじめる。そしてあろうことか、その拭ったあとの紙を丸めて、観客に投げつけるではないか!
さらにどうかしてるのは、その紙を観客が声を上げながら、狂ったように奪い合うことだ。実はこの紙は「拭くの紙=福の神」という縁起物で、これを首尾よくゲットした者は子宝に恵まれるという。
だがよく見ると、必死で紙を奪い合っている人のほとんどは、50過ぎのおばちゃんたちである。恵まれたいのか、子宝に。
「拭くの紙」の争奪戦はいつまでも続き、しまいにはお多福みずからが自分の股間をぬぐっては投げ、ぬぐっては投げするというものすごい状況に。こうして、わが国で最も由緒ある、そして最もパンクな性の祭はフィナーレを迎えるのであった。

おまけ:神社で売ってたちんぽ鈴
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