ちんまん学術調査 「女の子の性器の愛称は?」 アンケート結果に関するレポート

文責:藤井 浩


 去る5月1日から約半月間にわたって、当学会では「女の子の性器の呼び名」に関するアンケートを行った(アンケート結果)。男の子の「おちんちん」に相当する女の子の性器の呼び方は、家庭や教育の場で性について語る際に重要な問題である。しかし、それをどう呼ぶかについての議論は、いまなお結論を見ていない。そこで、当学会でこの問題を考察する際の基礎資料として、このアンケートを実施したのである。

 実際には、アンケートの回答数そのものは有意なデータとはならなかった。これはアンケートの技術的問題で同一人物からの連続回答を許してしまったことと、途中からアンケートが急速にネタ化していったことが原因である。このことは今後の課題としたい。
 そこで、ここでは寄せられた回答から抽出されたちんまん語彙を中心として考察していこうと思う。

●寄せられた呼び名の傾向

 今回用意した質問は、

 ・あなたは幼少のころ、女性器を何と呼んでいましたか?
 ・あなたは子どもと会話するとき、女性器を何と表現しますか?
 ・しつけや教育の場における女性器の愛称として、どんな呼び方が適切だと思いますか?

 の3項目であった。このうち、第1、第2の項目に関しては、語彙・票数とも似通った結果となった。それをまとめると以下のようになる。

 1)「まんこ」派と「あそこ」派の2大勢力
 当学会の主張は「いついかなる場所でも明るくおおらかに“まんこ”と呼ぼう」というものである。それに賛同する意見(まんこ、おまんこ、おまんちょなど)はこのアンケートでも多数寄せられた。もちろん学会内でのアンケートということでバイアスがかかっている点は考慮しなければなるまい。
 同様に投票数が目立ったのは「あそこ」という呼び名である。言いにくいことを指示語で表すというのは日本語のひとつの伝統であり、これは最もあたりさわりのない呼び方として定着しているのであろう。だが、これをして「女性器だけをタブー視している」と批判する向きもある。

 2)豊かな方言の広がり
 寄せられた呼び名のなかには、女性器を表す各地の方言も散見された。「おめこ」「ぼぼ」「べっちょ」「つんびい」などがそれである。これらの多くは「まんこ」と同様、それぞれの土地ではいわゆる「卑語」としてタブー視されている。しかし、これらもまごうかたなき「お国言葉」であり、それを継承する意味でも大切にしたいものである。

 3)「おちんちん」「おちょんちょん」の意外な高支持率

 以前、幾度か各種の教育機関・グループにおいても、女性器の愛称についての論議がなされたことがあった。そのとき提唱された案のうち代表的なものがこのふたつである。「まんこ」では直接的すぎる上、この言葉には性器だけでなく性交の隠語としての意味もあるところから、言い換え語が求められたのであろう。
 このうち「おちょんちょん」は、一部の地方では女性器を表す言葉として古くからあったものだという。だが「女の子の性器も男の子と同じように“おちんちん”と呼ぼう」という主張は、「男女の平等」と「男女の性差」とを履き違えた発想であると当学会は考える。
 しかしながら、掲示板やメールの意見では、「おちんちん」という呼び名が一番言いやすいという声も少なくなかった。やはり「まんこ」はわが子に向かっては発声しにくいようだ。学会としては家庭の中でも「まんこ」とおおらかに呼んでほしいものだが、もし「おちんちん」という呼び名によって家庭での女性器に対する会話のタブーが除かれるのであれば、それもまた認めるべきなのかもしれない。

 4)その他の優れた呼び名
 アンケートの中には、ユニークな呼び名がいくつか見出された。
「大事なところ」「だいじだいじ」「おだいじ」などは、女性器に対するいつくしみを表し、同時にほほえましい感じをもたらすよい呼び名だと思う。また「いいもの」というのも同様に素晴らしい。ただ、じゃあちんちんはいいものじゃないのかという疑問はあるが。
 なお定番である「われめ」「おまた」は、女性器の名称としてはかなり普及した印象があるが、このアンケートでは意外と伸びなかった。これらの語にも中途半端に卑猥な意味合いがついてしまったからであろうか。


●子どもに女性器をどう教えるか

 第3の質問である「しつけや教育の場における女性器の愛称」に対しては、前2項とは微妙に異なる投票結果が見られた。それは「女性器」「膣口」「ヴァギナ」といった学術的名称が登場してきた点である。
 これは「おちんちんに対応する女性器の愛称」という当アンケートの趣旨とはやや外れるが、子どもへの教育として「性」を語る場合、行き着くところはこういったフラットな呼び名以外にはないのかもしれないとも思わせる。
 いまは引退した芸人の上岡竜太郎は、娘が「子どもはどうやって生まれるの?」と聞かれた際、「男の陰茎を女のヴァギナに挿入して、精子を射精して卵子に受精さすんや」と答えた。すると娘は、意味のわからない単語を自分で辞書を引いて調べ出したという。当学会が志向するおおらかさはあまり感じないが、こういう教え方も「アリ」なのかもしれないと考える次第である。


●今後の課題

 冒頭にも述べたように、技術的な問題などからこのアンケートには不備も多かったが、「女性器の愛称問題」に関してさらに考察を進めるきっかけにはなるであろう。今後も学会としてはこの問題を継続的に追跡していきたい。
 これからの課題としては、まず「子ども自身が子どもたちのコミュニティの中で女性器をどう呼んでいるか」を調査すること。だがこれをフィールドワーク的に調査する(つまり女の子をつかまえて「その、あそこのこと、なんて呼んでる?」と聞いて回る)と警察に捕まりかねないので難しいところである。
 また、「まんこ」が何ゆえ子どもとの性の語らいにおいて忌避されるか、なぜ言い換え語が必要とされるのかについても考察する必要があろう。古来「まんこ」や「おめこ」「ぼぼ」といった言葉は純粋な女性器への指示語、あるいは稚気あふれる素朴な通称として流通していたもののはずだが、長い時を経てしだいに卑猥で下品な意味が付与されていき、やがてタブーとされていった。この経緯を読み解くことこそが、「まんこ」解放への道と言えよう。
 この調査は、今後とも学会のメインテーマのひとつとして継続していく所存である。


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