![]() 時が止まったように静かな館内 ![]() 額縁水槽の列 ![]() 水槽の絵にも物悲しさが |
タワー水族館うらぶれ系タワーというものには、なぜか常にうすら寂しさがつきまとっているような気がする。東京タワーしかり、通天閣しかり、なんとなく前時代的でカビくさくて、それでも観光名所としては無視するわけにもいかない、盛りを過ぎた大御所お笑い芸人みたいな雰囲気がある。 先日、思い立って韓国へ旅に出た。下関からフェリーで釜山へ。桟橋を降りて空を仰ぐと、まず目に入ってくるのが「釜山タワー」だ。遠くからその姿を見ただけで、日本のタワーと同じもの悲しいオーラをまとっていることがわかる。しかし、そのタワーの足元には水族館があるというではないか。これは行かぬわけにはいかない。 釜山の中心の小高い丘にある龍頭山(ヨンドゥサン)公園に、釜山タワーはそびえている。展望室からの眺望はたしかにすばらしいものだったが、やる気のないみやげもの屋や古びたのぞきからくりの機械(なぜか北朝鮮関係のネタが多し)など、すべてがけだるいオーラを放っている。 水族館も、それは同じだった。小さくて薄暗い館内(というより室内)には、とりあえず見栄えのしそうな熱帯魚のたぐい(でもピラニアとかキャットフィッシュとか華のないヤツがほとんど)が額縁ショーのように展示されている。釜山なんだから港近くにいるさかなを展示しようとか、そういうテーマ性はいっさいない。 内部は10分ほどですべて見てまわることができる。いや、5分もあれば充分かもしれない。モギリのおねえちゃんの横ではひとすくいいくらで金魚を売ってたりして、物悲しさを倍加させる。このおねえちゃんも、平日なんかはさぞやヒマなことだろう。 おもしろかった、とは口が裂けても言えない地味な施設ではあったが、このわびしさがまたよいのだとワタシは思う。日本には、こういう水族館が昔はたくさんあった。巨大回遊槽やトンネル水槽が流行る前のレトロな水族館が、ここには今も生きている。 ソウルへ行けば近代的な水族館がふたつある。後から知ったが、釜山にもすばらしい大規模水族館が存在していた。このタワー水族館も、いずれはつぶれてなくなってしまうか、もっと今風の施設に取って代わられるのだろう。しかしこのさびれたやる気のない水族館も、また愛すべきものだと思うのだ。 まあ、面白い海の生き物が見たければ、ここへ来るよりも海辺の市場へ行ったほうがいいわけだが。その場で刺身にして食わせてくれたりもするし。 |