![]() イワシの群れをかすめて泳ぐエイ ![]() 飼育係にじゃれまくるイルカ ![]() 生き物のいない水槽「沈黙の海」 |
日本一正しい水族館桜島へのフェリーターミナルに程近い港湾部、その埠頭にあるのが「いおワールド かごしま水族館」。かなり新しい施設である。 入口からエスカレーターを昇ると、眼前に広がるのが黒潮回遊槽。葛西臨海水族園に匹敵するような大水槽に、クロマグロやカツオが泳いでいる。2メートル以上の巨大チョウザメや、シノノメサカタザメなどといった変わった形のエイも入れられていて、のっけから眼福。水槽の上部ではきらきらした輝きが渦を巻いていて、てっきり波が立っているのかと思ったら、それは小さなイワシの群れだった。大型魚がやってくるたびにサッとよける銀色のかたまりは、全体でひとつの生き物のようだ。ちなみにこの大水槽の側面はトンネルになっていて、そこを通り抜けることができる。 順路はそれから南西諸島の海の生物、そしてこの施設の近くにある錦江湾の生物を見せてゆく。あまり他の水族館で見られない、南方の水族がふんだんに展示されているのがうれしい。中でも白眉なのは「海底火山の生物」で、熱水が吹き出る海底温泉の近くに棲む「サツマハオリムシ」というチューブ状の生物が、なんと生きた状態で展示されている。こんな展示は世界中探しても珍しいのではないだろうか。 順路の最後のほうには淡水魚コーナーもあるのだが、ここのピラルク水槽がまたデカい。先の黒潮回遊槽やその他の大水槽も含めて、この水族館の水槽は概して奥行きが広いように感じる。ふつう水槽というのは屈折率の関係で実際より奥行きが狭く見えるものなので、おそらくよっぽど実寸が大きいのだろう。ピラルク水槽では槽内での繁殖を目指してるそうなので、がんばってほしいものである。 他にも、NHK製作の3Dハイビジョン映画(ことさらに3Dを強調しない、ドキュメントタッチの作品)や、曲芸性を排除したイルカショー(イルカの生態をお勉強しよう、というスタンス)など、どの展示も非常に好感のもてるものである。ワタシはショーをやっていない時のイルカプールをしばらく見てたのだが、イルカたちがプールサイド(つまり水の上)に昇ってきて飼育係とじゃれていたのが印象的だった。飼育係がいくらプールにイルカを戻しても、飽きずに何度も戻ってきて「かまってくれえ」というカンジですり寄ってくるのがかわいい。単にハラ減ってたのかもしれんが。ちなみにイルカについてもう少し書いておくと、ここのイルカプールは外の海に直結しており、ショーがない時にはイルカたちは自由に外へ出ることができるそうである。 全体的にとても行き届いた施設で、もしかするとこれは「日本一正しい水族館」と言ってもいいかもしれないとさえ思う。 最後に、この施設でワタシの心に最も残った展示をご紹介しよう。順路の中ほどにあるその小さな水槽には、ただ水だけが満たされ、生き物が何ひとつ入れられていない。 「沈黙の海」と名づけられたその水槽は、いつかこうなるかもしれない「未来の海」の風景を示しているのだった。 |