海遊館

訪問日:20010810
レポート作成:20010821

でかい。深い。
太平洋水槽をたゆたう2匹のジンベエザメ
実存とは
佇むタカアシガニ
こんがらがっちゃってもう。
「ふあふあ」してるクラゲ

巨大水槽・一本勝負


 大阪のベイエリア・天保山にある「海遊館」ジンベエザメの泳ぐ巨大水槽で知られる、全国屈指の水族館である。
 展示はラブロックの「ガイア仮説」をメインコンセプトとして、環太平洋のさまざまな地域の生態系を見せてゆく。特徴的なのはただ水槽に水族を飼うだけではなく、周囲の動植物もひっくるめたディスプレイを構築している点。たとえばエクアドル熱帯雨林の展示にはリスザルがいるし、パナマ湾のところにはなんとナマケモノがぶらさがっている。
 さて、この水族館のメインフィーチャーは、なんといっても太平洋水槽だ。建物の中心を4階分にわたってつらぬく深さ9メートル・水量5400トンの水槽に、冒頭で触れたジンベエザメをはじめクロマグロや各種サメ・エイなどが悠々と泳ぐ。海遊館はいわばこの巨大な水のタワーを中心として、そのまわりを他の施設が囲んでいるような構造になっているのである。
 順路はまずエスカレーターでいきなり最上階まで昇ってから、太平洋水槽をらせん状に下ってゆく。すなわち同じ水槽をぐるぐると何度も見ることになるわけだが、これがぜんぜん飽きさせない。むしろ、順路を進むにしたがって水槽の深部へ近づくという演出は、さながら海底に落下してゆくかのようで滋味深い。
 太平洋水槽には「海くん(オス)」と「遊ちゃん(メス)」の2体のジンベエザメがいる。2000年の6月に初代の海くんが死亡して、しばらく1体だけの展示だったのだが、このたび二代目海くんが就任、めでたくコンビが復活した(ちなみに言うと、遊ちゃんも現在は二代目である)。でっかいクチをがばっと開けてこっちへ泳いでくるジンベエザメは、迫力と同時にどことなく呑気な雰囲気をもかもしだす。子どもは思いっきり泣いてたが。
 太平洋水槽と同じくいくつかの水槽は数階分の深さを持っており、水深による情景の違いを楽しむことができる。ときおりアシカやカマイルカが水槽内を猛スピードで上昇・下降して遊んでいるのも、ここならではの見ものだ。こういった「垂直方向の広さ」を持った水槽は、海遊館の最大の個性である。
 ほかの水槽も、概して広くゆったりしている。マンボウイワシの群れも、よその館のように窮屈そうな感じがしない。ワタシが個人的にお気に入りなのはタカアシガニの水槽。薄青い光に照らされて、ぼんやりと突っ立っているタカアシガニの群れはなんとなく哲学的思索をしているようにも見える。
 順路の最後には特別展示室があったのだが、最近は「ふあふあクラゲ館(「ふあふあ」はパンフの表記のママ)」としてクラゲを常設展示している。「1水槽1地域」で統一されているこの水族館の展示からはちょっと浮いている気もするが、やはりクラゲフェチのワタシにとってこういう空間はなごむ。
 特にショーをやっているわけでもなく(アシカの水槽では時々えさやりのついでに観客サービスすることもあるが)、とにかく大きな水槽ドンと観客の前に提示して、それを心ゆくまで見せてくれる。そんな海遊館の展示に、なにか一本筋の通った「侠気」のようなものを感じずにはおれないワタシであった。



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