庄内浜加茂水族館

訪問日:19990222

ほのぼの。
画用紙に手書きされた説明プレート
水族なのか?
なぜか展示されていたケサランパサラン
びっしり。
所狭しと並ぶサカサクラゲ

日本海の荒波にクラゲのパラダイスを見た


 日本海沿いに走るJR線に乗り、山形県の鶴岡駅へ。そこからさらにバスに乗り換え、山道を30分。突然の風雨の中、やっとたどり着いたらすでに閉館1時間前だった。
 改装中なのか一時的なメンテなのか、はたまたいつもこうなのか、空の水槽がやけに目立つ館内。魚の入ってる水槽も、淡水魚や地元の近海魚が中心の地味な構成である。
 いつもは屋外でアシカショーやウミネコの餌付けなんかもやってるようだったが、この日は強風のため中止。なぜか飼われているアライグマも寒くて穴のなかにうずくまってるし、オタリアやゴマフアザラシもなんとなく所在なげ。2匹いるラッコはけっこうな年寄り……と、全体的にうら寂しげな水族館ではあった。水槽に付された解説も手書き文字に色エンピツで描いた絵で、ほほえましいトホホ感を倍化させる。入口には「向井さんといっしょに宇宙に行った和金の兄弟」っていうのがいたけど、どっからどう見てもフツーのキンギョでありましたことよ。
 もとより派手な展示を期待してはいなかったけれど、ちょっと来た時期が悪かったかなあ……と思いつつ順路を進み、やがて出口へ。ところが、この出口直前のフロアがただものではない。ものすごい数のサカサクラゲ! しかも成体、子供、ポリプと3つの水槽に分けて展示されてる。他にも紫色のタコクラゲや、ミズクラゲ(これも成体と子供の2槽)がふわふわと気持ちよさそうにたゆたっている。一見地味なこの水族館、実はクラゲ天国なのであった。
 それらを阿呆のようにじっと眺めていると、館の職員さんに声をかけられ、いろいろ説明してもらった上に水族館の裏へ案内され、繁殖中のクラゲを見せてもらった。おまけに帰りのタクシーを待ってる間、事務所でコーヒーまでゴチになってしまう。
 コーヒーを飲んでいると、初老のおじさんがやってきてストーブの向かい側に腰をかけた。どうやら、この人が館長らしい。少しの間館長と話す機会を得たわけだが、館長は目を輝かせて「ゆくゆくはクラゲをこの館のメインに据えたい」と熱く語るのだった。また、地味でも地元の魚を大切にして独自色を出したい、とも。「熱帯魚なんかは食堂の壁際にでも置いといて、すぐそこの海に住んでるタラとかの回遊槽をつくりたいんよ、それとクラゲと」。いいぞ館長!
 というわけで、思いがけず水族館の熱意と人情にふれたひとときであった。ここのサカサクラゲはいくらでも増えるので、近くの学校とか希望者に配っているらしい。ワタシも帰り際、おにいさんに「今度来たらクラゲ、あげますよ」と言われた。これが旅の途中でなければ、よろこんでもらったところなのだが。
 というわけで、クラゲ好きならこの水族館へゴーだ! 入れ物を忘れるな! サカサクラゲはペットボトルでも育つって言ってたぞ!


『水族紀行』インデックスにもどる
『そこはか通信』タイトルページにもどる


copyright(C)1996-2009 FUJII,HIROSHI all rights reserved.