弥生座看板ウォッチング

What's 弥生座?

 「弥生座」とは京都随一の繁華街・新京極に存在する映画館で、「弥生座1」「弥生座2」の2館より構成されている。それは一見ごく平凡な場末の劇場のようだが、ある一点において地元の映画愛好者の熱い視線を集め続けているのだ。それこそが、ここに紹介する看板アートの数々である。写実をあえて拒否したふくよかなタッチ、ルノアールを思わせる茫洋とした色彩、そして独特の書き文字。それらが醸し出すそこはかとない魅力は、街を行くものの目をとらえて離さない。
 本コーナーはこの弥生座の看板を定点観測することによって、その類まれなる美の世界を全国に知らしめんとするものである。

☆画像をクリックするとフルサイズになります(するかー?)。

画伯、引退!

 3月15日、弥生座2での新作「ジャック」の封切に合わせて看板の写真を撮りに行ったのですが、またしてもそれは「画伯」の作品ではありませんでした。公開中の弥生座1「東映アニメフェア」もごく普通の看板。さっそく弥生座に問い合わせてみたところ、なんと「画伯」こと一刈五良兵衛老は病に倒れ、もう看板を描かないという衝撃的な答えが返ってきたのでした。
 新京極を彩り、古都の映画ファンに愛されつづけてきたあの看板を見ることは、もうできません。したがって、本「京都弥生座看板ウォッチング」は今回をもって更新を終了することとなりました。画伯の功績をたたえるため、本ページはこのまま残しておきます。ありがとう一刈画伯。一日も早い病の回復を。(19970315)

SPECIAL LINK!

これが弥生座看板「画伯」の実体だ!

 ホームページ「Office Y2」「西日本なんでもまさぐる会」にて弥生座看板をレポート。なんと、本ページで「画伯」と呼んでいる看板職人の素顔を掲載! 本ページ立ち上げ以前の画伯の作品も収録されている。弥生座フリークは急いで飛べ!  

新・弥生座画壇 台頭か!?

 最近になってまた弥生座の看板がアヤシくなっているとの掲示板情報を受け、京都特派員けいちゃんに2005年9月中旬時点のようすをカメラに収めていただいた。それが↓こちら。



●同窓會/恋する神父

こんにちは。
今日ようやく弥生座の看板を写真に収めてまいりましたので送ります。
池内淳子と加藤剛に見えなさ加減は画伯のものなのでしょうか。
(けいちゃん)

 見たところわれらが一刈画伯のタッチとは異なるものの、なんかRGBがビミョーにズレたような独特の色彩、ミョーな味わいをかもし出すコピー、そしてなによりこれっぽっちも絵を似せようという気のない「だれやこれ感」に強い画伯の影響が見て取れる。池内淳子、エリザベスか。
 これはもう「一刈派」、あるいは「新・弥生座画壇の誕生」と言ってもよいのではあるまいか。京都の繁華街もシネコン化が進んだり、松竹の大劇場がいつのまにかネットカフェになってたりと様変わりしてしまったが、弥生座はこのままわが道を歩んでいただきたいと切に願うものである。(20050918)

新・弥生座画壇 続報

上の報告をいただいたけいちゃんより、弥生座看板の続報が届いた。



●ベルベット・レイン/タッチ

 ここで注目すべきは、両看板におけるキャッチコピーの使いかたである。昨今の写真拡大タイプの映画看板ではおざなりに扱われがちな惹句を、大きくフィーチャーする(場合によってはオリジナルででっちあげる)のが弥生座看板の特徴。これらの作品も、まるでエロ雑誌のグラビアポエムのようにビジュアルと一体化している。手書きレタリングならではの味わいもじっくりと鑑賞したい。(20051029)

突然新ネタ登場!

 一刈画伯引退にともなって更新を休止していた当ページであったが、なんと今になって新たな弥生座看板写真がメールにて到着!

はじめまして長濱といいます
弥生座の看板検索でここのことをしりました。
むか〜し、京都に旅行した時に見つけたのがありますので、よろしければ加えていただけたらと思います。
いかがでしょうか?
(長濱)

そしてこれがその作品だ!

●ゲゲゲの鬼太郎 大海獣/地獄先生ぬ〜べ〜

どこが間違っているというわけでもないのに、細部のいたるところにウィルスのごとく染みわたる一刈画伯テイスト。アニメという「原典がすでに絵」のモチーフにもかかわらず、もう「キャラクターデザインby一刈五良兵衛」としか言いようのない独自の世界を形成している。まさに画伯マジック。とくに、ぬ〜べ〜の口元の必要以上にむっちりした線にそのエッセンスが凝縮されていると言えよう。「きたろう」のルビがぬ〜べ〜側に侵食している点もポイント。

ありがとう長濱さん。そしてもし他にも弥生座看板に関する写真を持っている人がいるなら、ぜひ当ページに情報をお寄せいただきたいと願うしだいである。(20030714)

上映作品のかずかず

●あぶない刑事リターンズ/マンハッタン花物語

人をして「誰やねんこれ」とツッコませずにおれないこの画風こそが、弥生座看板の第一の魅力である。「マンハッタン……」におけるキャッチコピーの書体の妙にも注目していただきたい。

●わが心の銀河鉄道/訣別の街

「わが心の……」右端の人物は、どうやら渡哲也であるらしい。人生の荒波を乗り越えて円くなったのか。「訣別の街」のキャッチの「疑惑」が「疑感」になっているのも味わい深い。

●クリスマス黙示録/クライングフリーマン/Dearフレンズ

カゼをひいた三田佳子みたいな天海祐希、そして大ちゃん涙を流すフリーマン。しかし「Dearフレンズ」のキツさにはそれらもかすんで見える。「Friends」のスペルもさりげなく違う。

●金田一少年の事件簿/ファイナルプロジェクト

アニメである「金田一……」にはさすがに弥生座タッチの入る隙はなかったか。だがその分ジャッキーの方ががんばってくれている。ほとんどぬいぐるみと言っても過言ではない。

●流れ板七人/痩せゆく男

「痩せゆく男」は残念ながら「われらが画伯」の手になるものではないらしい。だが「流れ板七人」の出来栄えはそれを補ってあまりあるものであろう。丸で囲まれてもなあ。
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