特別企画

勝手洋題


 これまで我々は世のカタカナタイトルの氾濫に対すべく、さまざまな邦題を本ページ上で創出してきた。その活動は微力ながらも着実に同志を増やし、いまや天下にとどろく大事業として知られるところとなっている。しかし、我々にはまだ成さねばならぬことがあるのだ。
 そのひとつは、海外において日本映画作品が紹介される際の「英語タイトル」である。これにはまだまだ、「言霊」の精神を理解しない無思慮かつ無分別な輩の所業がまかり通っている。
 たとえばかの名作「心中天網島」は、海外でどのように紹介されているかご存知だろうか。"DOUBLE SUICIDE"、それがその海外タイトルである。二重自殺。確かに「心中」の訳語として辞書的には定着している言い回しだが、しかしいくらなんでもこれはなかろう。
 あるいは「風の谷のナウシカ」。これは現在では"Nausica of the Valley of the Wind"というタイトルで通っているが、はじめ紹介された時(ギタギタにカットされ、ドヘタな声優で吹き替えられたバージョン)のタイトルは"WARRIORS OF THE WIND"だった。風の戦士たち、確かにカッコいい。しかし、作品の内容を誤解させる危険をはらんだ訳と言えはしないか。
 当「勝手邦題」では、年末年始の特別企画として、これまでの「洋題→邦題」とは逆のパターン、すなわち「邦題→洋題」のタイトルの考案を同志に呼びかけたい。すなわち「勝手洋題」である。映画を愛するすべての同志よ、立ち上がれかし!

結果発表!

大賞
  • 八甲田山→Picnic at the blizzard mountain
    from ピンキィ君

  • 佳作
  • オバケのQ太郎→Q, The Invisible Monster
    from奇妙愛博士

  • 戦場のメリークリスマス→Homosexual Soldiers
    fromJFカサイ

  • ドン松五郎の生活→His Life as a Dog
    from あみん大統領夫人(「AHp」主宰)

  • 主宰賞
  • もののけ姫→A girl and her dogs
    fromオリイ「ORII'S WEBSITE」主宰)

  • 羅生門、酔いどれ天使、生きる→The gate of MIFUNE,The drunken MIFUNE,No MIFUNE
    from 友引

  • エレキの若大将→I was a teenage electric man
    fromkuri「デジタル文芸(デジブン)」主宰)

  • 「日本誕生」「日本の一番長い日」「日本沈没」→All about the History of Japan
    from森 孝夫

  • 二十四の瞳→2x12 EYES
    from じゅんじゅん


  • 全エントリー作品一覧
    全投票結果

    選評

     当ページ掲示板(旧)での雑談からはじまったこの企画であったが、外国語でネタを考えるというハードルもあって、どれくらいの作品が集まるか当初は不安だった。しかしフタを開けてみると非常に優秀な作品が集まり、「勝手邦題」同志の力量が示される形となったのは主宰として喜ばしいことである。
     全体的なレベルの高さを反映してか、作品投票アンケートはたいへんな票割れ混戦の様相を呈する結果となった。僅差で上記の作品に栄冠が輝いたが、他の作品も受賞作とクオリティ的にはほとんど変わらないと言ってよいだろう。
     大賞「八甲田山→Picnic at the blizzard mountain」は、カルト作『ピクニックatハンギングロック』のパロディであると同時に、八甲田死の行軍を「ピクニック」と言い放つブラックさが秀逸である。
     佳作「オバケのQ太郎→Q, The Invisible Monster」は、50年代の低級怪獣ムービーを愛する人間ならニヤリとする作品。バカ映画好きが集まる当コーナーのツボを押さえた洋題である。「戦場のメリークリスマス→Homosexual Soldiers」は、このミもフタもなさがキモ。いやそうなんだけどさ。「ドン松五郎の生活→His Life as a Dog」は言うまでもなく『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』からの剽窃だが、「as a Dog」っつってもホントーに犬なんだからしょうがない。雑種犬の眉毛のような脱力感が漂う作品である。
     さて、今回もアンケート結果とは別に、主宰であるワタシが独断で「主宰賞」を選ばせていただいた。「もののけ姫→A girl and her dogs」は洋ピンの獣姦モノ風のタイトルがこのアニメの潜在的なフリークス性を言い当てていてよい。「羅生門、酔いどれ天使、生きる→The gate of MIFUNE,The drunken MIFUNE,No MIFUNE」は三段落ちの妙。「The gate of MIFUNE」って、そんな門ぜったいくぐりたくない。「エレキの若大将→I was a teenage electric man」も、バカ映画ファン心をくすぐる作品である。「「日本誕生」「日本の一番長い日」「日本沈没」→All about the History of Japan」の壮大な歴史ダイナミズムも素晴らしい。こんな国住みたくない。「二十四の瞳→2x12 EYES」にはザブトン一枚というカンジのうまさがある。
     その他の作品もそれぞれに面白く、本来なら全作品を表彰したいと思うほどである。この企画を支援してくれたすべての同志に感謝したい。(主宰・藤井 浩)


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